PETがん検診

2006年度FDG-PETがん検診アンケート調査の結果報告(概要)

はじめに

日本核医学会と臨床PET推進会議は、FDG-PETがん検診の質の向上を目的として、2007年に「FDG-PETがん検診ガイドライン2007」を発表した。このガイドラインでは、FDG-PETがん検診を行う施設は、精度管理のためにその実績を定期的に報告することが求められている。ここにまとめたデータは2006年度(2006年4月から2007年3月まで)に実施されたFDG-PETがん検診検査に関して、日本核医学会PETがん検診の疫学調査WG、臨床PET推進会議PET検診分科会、および厚生労働省第三次対がん総合戦略研究事業(斎藤班)が合同で行った全国調査を集計した概要である。

なお、FDG-PETがん検診とは、FDG-PET(PET/CTを含む)による健常者を対象とするがんのスクリーニング検査で他の検査を併用する場合を含む。

アンケート回答数、受診件数、精査率

調査当時FDG-PET検査を行っていた156施設中、調査に回答したのは98施設(回収率62.8%)であった(別表1)。そのうち「FDG-PETがん検診」を行った施設は68施設であり、総受診件数は46,857件(男性27,719件 女性18,938件 不明200件)であった。受診者の年代分布は50、60代に多く、全体の約63%を占めていた。総受診件数の検査機器別内訳は、PET専用機22,030件、PET/CT装置24,827件であった。本調査では、要精査者の追跡に重点を置き、全要精査者に対する精査結果の回答を求めた。精査結果は上記68施設中、調査が不十分な9施設を除く59施設で集計(精査結果回収率:44.0%)されていたので、以下に述べる発見率や陽性率などの解析はこれらの施設を対象とした。その59施設の受診件数は、43,061件(男性25,594件 女性17,467件)であり、受診件数の検査機器別内訳は、PET専用機 21,527件、PET/CT装置21,534件であった。経年受診率は約25%であった。

総合判定での要精査例は受診者の10.4%(PET専用機:9.3%、PET/CT装置:11.4%)であった。なお、「要精査」とは、PETと併用検査を含めた総合判定でがんが疑われて精密検査を勧めた例をいい、68施設中、58施設は何らかの併用検査を行っていたが、併用検査として別表2にあげる検査が実施されていた。

FDG-PET検査方法に関する集計結果

撮像機器は88台で、PET専用機は27台、PET/CT装置は61台である。FDGの投与量は、一定である施設が18施設(平均195.1 MBq)、可変とする施設が48施設(平均219.1 MBq)であった。撮像部位は、PET、PET/CTにかかわらず大多数の施設が「頭頂部-大腿部」を選択していた。Delay scanは、9施設で常時実施し、44施設では必要に応じて実施、15施設では実施していなかった。Delay scanの開始時刻(FDG投与後)は120分を選択する施設が大多数であった。

発見されたがんの集計結果

発見されたがんは合計491件で、受診者の1.14%(FDG-PET所見陽性 0.89%、陰性0.25%)であり、FDG-PET陽性率は77.8%であった(別表3)。PET陽性率は併用検査に大きく依存するため、いわば相対的感度である。発見例の多かったがんは、PET陽性率が高かったものとしては、大腸癌(発見数116件、PET陽性率87%)、肺癌(94件、78%)、甲状腺癌(87件、90%)、乳癌(29件、83%)が、PET陽性率の低いものとしては前立腺癌(44件、32%)、胃癌(26件、50%)があげられた。

考察

「FDG-PETがん検診ガイドライン」では、各PET検査実施施設は、件数などの集計とがん発見例の詳細について定期的に報告することとなっている。今回は昨年を大幅に超える98施設からの回答を得たが、受診件数は前回を下回っており、回答率を考慮するとしても、わが国でのFDG-PETがん検診は総件数としては必ずしも伸びていないと考えられる。PET/CT装置による検査件数はPET専用機を上回り、PET/CTがPETがん検診の主流となりつつある。PET、PET/CTそれぞれの要精査率は昨年と同程度であったが、PET/CT装置による検査の増加により、結果としてPETがん検診全体の要精査率は上昇した。本調査は要精査者(検診陽性者)の追跡に重点を置き、要精査例すべての精査結果の報告を求めているが、前回調査同様に各検診施設はその情報を得るために多大な労力を要しており、精査結果の回収は要精査者の4割程度となった。その中で、発見された癌は全体の1.14%であり、そのうちPETが陽性であった割合や発見されたがんの傾向も昨年度調査と同等であった。

最後に、アンケートに協力いただいた、多数の医療機関の方々に感謝申し上げる。


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